さがしモノの旅『阿蘇編』
《出会いは、靴の展示会で》
中目黒でやっていた靴の展示会に行ったときのことです。
小さなギャラリーをシェアしていたのが、シャツ屋さんでした。
きれいなシャツの中にも、芯がある個性を感じて、引き寄せられるように展示を見ました。
1つ1つのデザインに理由があり、もの作りにこだわりを感じて、
「どこで活動をしているのですか?」
とデザイナーさんに聞くと、キラッと目を輝かせ
「アソです。熊本県の阿蘇で、デザインから縫製までやっています」
そのあとは、シャツの話よりも、阿蘇がいかに素晴らしいかという話がメインに。。
阿蘇という土地が、とても気になる場所になった瞬間です。
《はじめての阿蘇》
その数ヶ月後、久留米絣の織元さんとの打ち合わせがあり、九州に行くことになりました。
「阿蘇に行きたい!!」
ん、、?阿蘇、、なんで?と言う顔の妻を説得して、
ぼくらは初めての阿蘇に向うことになったのです。
熊本空港からレンタカーでデザイナーの吉田さんがいる南阿蘇へ。
※イメージ画像です。。
阿蘇のイメージってありますか?
阿蘇山がドーンとかまえていて、草原が広がっていて。
火山がモクモク煙を出している。
ぼくは何となくこんな感じでした。
車を走らせて小一時間。
日本のよくある国道を走っているのですが、なんだか、すこし雰囲気が違います。
大きな壁の中を走っているというか、クレーターの中にいるような異空間。
その理由は時々遠くに見える、切り立った崖です。
「この地形は何だろう?日本のどことも違う!」
阿蘇をもっと知りたくなって、ワクワクした事を思い出します。
カーナビが目的地に近いことを知らせてくれて、街道から脇道に誘導されました。
そこは、住宅地のような別荘地?見事な紅葉が道の両脇に広がります。
僕たちのテンションはドンドン高まってきます。
《ヨーロッパの工房のよう》
到着したアトリエは、真っ赤なモミジとヴィンテージのホンダのバイクが置かれた雰囲気のある建物。
吉田さんが、良く通るオペラ歌手のような低音の声で、歓迎してくれました。
建物に入る前に注意事項が、
「犬がいるのですが、どんなにかわいくても触らないでください。噛みます。」
えっ!、、、噛む犬が放し飼いされているの?
阿蘇の雄大な景色とは裏腹に、一気に緊張感が増しました。
建物の中に入ると、そこは異空間。
映画で見るような海外のファッションデザイナーのアトリエのようです。
部屋の中にはミシンが心地よい音を立てていました。
《なぜシャツデザイナーに?》
吉田さんがコーヒーを淹れながら、ブランドの成り立ちを教えてくれました。
15歳の時に料理人の世界に入り腕をみがき、20代はバンドなどの音楽活動を、
そして20代が終わる頃、「もっと夢を見てみたい!」ファッションデザイナーを目指します。
ここまで聞くと、おいおい、、料理とバンドの次はファッションかい??って、
軽い感じで思われそうですが、ところがどっこい!すべての事に全力投球。
話を聞いているとワクワクするような人生を歩んで来たのが伝わります。
《自分でモノを作りたい》
「もの作りをしたい!」と飛び込んだのは、ファッション専門学校の夜間部。クラスメイトは若者ばかり。
ふつうは基礎から作品作りまで数年かけて学びますが、20代後半の吉田さんは、あることを決めました。
すべてを作れる人にならなくてもいい。なにか1つをとびぬけて出来る人になる。
もともとシャツが好きなこともあり、学びの時間をシャツのデザインと縫製につぎ込みました。
そんなことが関係しているのかもしれませんが、
吉田さんは、ファッションデザイナーと言うより、シャツ職人と言う言葉が似合います。
《阿蘇の魅力にひき寄せられた》
神戸育ちの吉田さんが、阿蘇に魅せられたきっかけがあります。
ブランドを立ち上げてすぐの頃、熊本のアートイベントに参加したときに、阿蘇でポップアップをやったそうです。
「この土地のなにもかもが、ステキでした」それから何度も阿蘇に通い、そんなに好きならここでやろう!と決めたのです。
「どのようなところで作っているかが大事だと思うのです」
スイスの時計は、スイスで作っているから価値がある。
阿蘇で作った洋服だから、価値があるモノにしたいのだとか。
ものつくりの背景を大事にしているカタカナの、モノの選び方とも重なってくるようです。
《ここが阿蘇での原点》
「阿蘇のお店に住んで、阿蘇のお店で作る」そんな思いで出来上がったのがこのお店。
吉田さんのこだわりが詰まっているこの場所は、パッと見ると敷居が高そうですが、
その高さを乗り越えて入ってくると、心地よい時間が流れています。
《自社工場を作りたい》
お店を切り盛りして行くうちに、吉田さんの夢はふくらみます。
「自社工場を作りたい」
彼を見ていると、夢は実現する為にあるのだと気がつかされます。
2017年完成。いま僕たちがコーヒーを飲んでいる場所が自社工場です。
この工場を完成させたことで、前から考えていたレディースの新ブランドがスタート。
名前を「GOGAKU」と決めました。阿蘇五岳からもらったのだそうです。
どこもまでも阿蘇好きで気持ちいい。
スタッフの方が若くてビックリ!
縫製の仕事をしていた人や、東京でアパレル会社に勤めていたキャリアの人、まさに頼りがいがありそうな若者達。
大変な事は多いと思いますが、好きなことを仕事に出来ている楽しさが背中からあふれていました。
《そういえば、犬のこと》
ちょっと散歩に行きますか!向かったのは屋上です。
「今日は犬を室内に放し飼いにしておくのは危険だと思って、この場所につないでおきました」
吉田さんが首輪のついたチェーンをスルスルとたぐると、ヒモを切った後だけ残ったロープが、、脱走?
「出てきても触らないでくださいね!!」秋の青空の下に緊張が走ります。
「よ~し。。いい子だ!バービーちゃん♡」
奥の草むらから、一緒に歩いてきたのが、愛犬バービー。
保護犬を引き取って、最初の頃は人をまったく寄せ付けなかったのだとか。
「人からひどいことをされたのかもしてません」
吉田さんには完全に心をゆるしているそうです。
《夢はつづく》
吉田さんはこれからの夢も教えてくれました。
「パリにお店を出したい」
とにかくパリが大好きで、コロナ前は年に1度パリのギャラリーを借りて、1週間ほど自費で個展をやり続けていたのだとか!
目標のために1つずつ前に歩んでいく姿を見ていると、パリのメゾンがOPENするのは、そんなに先では無いような気がします。
パリと言えば面白い話を聞きました。
神戸のころの知り合いが、なんと!アフリカンバティックの傘を作るsunmiのフチガミさん。
彼女のパリの買い付けの出張に同行したことがあるのだとか。
あまりの珍道中ぶりに、僕たちはおなかを抱えて大笑い。不思議なご縁があるものです。
僕も妻もパリは大好きな都市です。
今度はさがしモノ旅 パリ編をお届けできるかも!
《観光もしましたよ》
阿蘇の観光名所を1つだけ行く時間があったので、草千里ヶ浜に行きました。
途中で牛が放牧されていたりと観光気分!
グングンと山を車で登っていくと、突然木が生えていない山の上。ススキがまさにゴールドに輝いている。
なんだこの空間は??
草千里ヶ浜に到着!
またまた、なんだ?ココは!日本だけど日本じゃ無いみたい!
しばらく、頭を空っぽにして地球をじっくり味わいました。
《その時ふっと》
「どのようなところで作っているかが大事だと思うのです」
阿蘇に魅せられた吉田さんの事を思い出しました。
ステキな服が阿蘇のアトリエからやってきます。
わくわくドキドキして待っていましょう。
イベント『gogaku 阿蘇から生まれる洋服たち』のお知らせはこちら→◎
日本のかっこいいものを集めたお土産屋さん
カタカナ自由が丘店からのお知らせでした。