Katakana-日本のかっこいいを集めたお土産屋さん

カタカナのつくり手とはこび手「TEWSEN」

#カタカナのつくり手とはこび手

6月某日、TEWSENを手掛ける「丸久商店」へいってきました!
「今月はTEWSEN(注染)のダボシャツをやります。」と社長の河野から発表があってから、ダボシャツが気になって仕方がなかった私。ダボシャツって!?

そういえば、カタカナの手ぬぐいといえばの「kata kata」さんも注染。だというのに、注染の染め方や現場を見たことがない...

これは行かねば!と社長に直談判。
TEWSENを手掛ける丸久商店さんの取材に、同行しました。(ありがとうございます!)

 

人形町を降りて、下町の情緒漂うオフィス街を通り丸久商店さんに向かいます。
ここかな...もうちょっと先かな?とスマートフォンとにらめっこしながら、「あ!ここだ!着きました!」

伝統ある店構えに、背筋が伸びます。

こちらの店舗では、東京注染ならではの手ぬぐいや浴衣を取り揃えています。

 

工房に到着すると、丸久商店五代目の山内さんが出迎えてくださいました。
五代目の若夫婦、山内昂さんと、斉藤美紗子さんは、東京藝大日本画の出身で
約11年前に斉藤さんの実家である丸久商店さんを継がれているのです。

まずはじめに、山内さんに丸久商店のことを伺いました。

「丸久商店は、明治三十二年、日本橋堀留町で創業しました。
幕末期にうまれた東京注染の伝統を受け継ぎながら、創業時からお祭りや歌舞伎、日本舞踊の手ぬぐいや浴衣をつくっています。

近くにある堀留公園は、元々川があったので、このあたりは染め物をあつかうお店が多かったのです。」

堀留公園は、東堀留川というお堀を埋め立てて誕生した公園。(現在も地下には非常時の貯水池があるようです。)
繊維問屋が多かった街柄、かつては生地や商品を船で運搬し、たくさんの小舟が行き来したそうです。

今では想像できない江戸の風景に、思いを馳せます。

「わたしたちは、生地屋・型屋・染屋などをつなぐ問屋でもありますが、代々受け継いできた型紙と廃業になってしまった同業者からいただいた膨大の数の型紙を復刻したり、型に着想を得て独自に柄のデザインもしています。」
単に商品ではなく「注染」という文化を通じてものづくりを行っている山内さん。

さらに活動は、国内に留まらず、パリのアーティストとコラボレーションでテキスタイルやタペストリーを製作し、「注染」の魅力を国内外へ発信しています。

 

今回ご紹介する「TEWSEN」も注染のあたらしい魅力を届け、価値を発掘する挑戦のひとつ。

「TEWSEN」のはじまりは、運命的な出会いがきっかけでした。

「江戸東京きらり」という東京都の商品開発企画を通じて、クリエイティブチームのスマイルズさんと出会いました。
スマイルズさんと現代のライフスタイル似合う注染のカタチを模索して、2022年に立ち上げたのがTEWSENです。」

▶江戸東京きらりについてはこちら
▶スマイルズさんについてはこちら

早速TEWSENの商品を見せていただきました。

「あれ?この形どこかでみたことあるような...」

実は、お祭りでお馴染みのあのシャツ。そうずっと気になっていた「ダボシャツ」です。近所の夏祭りでも屋台のお兄さん、着ていました!

「伝統的な形を大事にしたかったので、ベースはそのままで、ボタンの形の変更やポケットをつけたり、現代に合うようにアップデートしました。

生地には、昔から浴衣の生地として使われる「綿紅梅(めんこうばい)」というテキスタイルを使っています。
凸凹したテクスチャーで、汗をかいても肌にはりつきにくく、とっても涼しいのが魅力です。軽くて、程よいハリ感と丈夫さもあります。

ちなみに縫製は、埼玉の行田市で和装専門の職人さんにお願いしています。」と山内さん。

(★豆情報 綿紅梅は、凸凹を意味する勾配から、紅梅と名付けられたのだとか。
粋なネーミングセンスに、グッときます。)

説明を受けて、どんどんダボシャツが気になってきました...

それでは、お楽しみ!試着タイムのスタートです!

美しい鮮やかな柄のダボシャツ。羽織った瞬間に気分があがります。

「なんだか、いつもの自分じゃないみたい!」

着ている洋服もなんだか違ってみえる。はおりとしても、素敵です。

そして、TEWSENの魅力といえば、この柄。

スマイルズさんが数万の型紙の中から、1日かけてじっくりと見て、「現代に魅力的に映える」柄を選んだ後、柄からインスピレーションを受けながら、新たな柄を重ね、オリジナルのパターンの10柄が誕生しました。

▴帰り際、見せていただいた倉庫。代々受け継がれてきたたくさんの型紙が大事に保存されていました。素晴らしい職人の技術がつまった宝の山です。

 

例えば、こちらの「UME-BISCUS」という可愛らしいネーミングがついたこちらの一着。

昔ながらの梅のモチーフに稲妻のような柄が合わさり、咲き乱れる梅の情景がダイナミックに表現されています。

ピンクとグリーンそれぞれの色が引き立っていて、色重なった部分もとってもきれい!

「こうした色の重なりが楽しめるのも注染ならではなのです。」と山内さんが、注染について丁寧に教えてくださいました。
「まず注染とは、図案師が描いた布柄を、職人が手彫りして、そのあと特殊なのりで防染した生地の上に、染料を注いで着色する技法のことです。
型紙の制作→型付→染色→洗い・乾燥→仕上げの5つの工程を経て完成します。」

細やかな職人技、想像を超える作業の多さにただただ驚くばかり。
ふとバッグの中の手ぬぐいの存在を思い出し、一層の愛情と感謝の気持ちもって大事に使おうと心に誓いました。

そして注染は、明治時代からはじまった日本独自の染色方法だそうで、
表裏なく染められること、色と色が混ざり合うグラデーションや多色染めができることも特徴のひとつ。

名前の由来は、染色の際にヤカンとよばれるジョウロのような道具で染料を注ぐことから名付けられたのだとか。なるほど!

▶注染の工程をこちらの動画でくわしくご紹介しています。

 

そして、注染の工程のお話を伺っていく中で、わたしたちは厳しい現実を知ることに。

「型紙をつくるには「彫り師」と「紗張り師(しゃばりし)」による2名の職人技術が必要なのですが、紗張り師の職人さんは関東に1名になってしまいました。」

後継者問題・設備の老朽化などさまざまな背景から、廃業に追い込まれてしまう日本の伝統工芸に携わる職人さんは、少なくありません。
リアルに直面する現実に、胸が痛みます。

注染のものづくりは、各工程に専任の職人さんが携わる分業制なので、コロナ禍は製作が止まってしまったことも。
「自分たちで続けられる仕組みをつくろう!」とできたのが、現在型紙をつくっているこちらの工房。

現在では、あたらしく作るほとんどの型紙は、こちらでつくっているのだそう。
直面する問題に、前向きな姿勢で乗り越えていく山内さんと斉藤さんの姿に、私たちも胸が熱くなりました。

 

昔ながらの技法や職人の技を大切にしながら、伝統的な「注染」に遊び心を加え、あたらしい価値を引き出した「TEWSEN」。
東京の素晴らしいものづくりをみなさまにご紹介できるのが、楽しみでなりません!

今年の夏は江戸の伝統とアートを身にまとって、お出かけしようと思います。

山内さん、貴重な時間をいただきまして、ありがとうございました。

「TEWSEN展」は、7月11日(木)までカタカナ自由が丘店・オンラインストア・キナリノモール店にて開催中です。


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