Katakana-日本のかっこいいを集めたお土産屋さん

箒が教えてくれたこと 前編

#作家さんのこと

南部箒という岩手県の九戸で作られる箒のイベントも残すところあとわずか、11月17日が最終日。
思い返すとこの箒に出会ったのは5年前のある百貨店の職人展の催事場でした。
南部箒を作る高倉工芸の社長の高倉さんの口上につられ、熟考の末に下から2番目のランクの洋服用
の箒を買いました。それから今までこの洋服箒はカタカナの店内で掃除用具として活躍していました。
お客様のお買い上げが決まった洋服や帽子・カバンなどのちょっとしたほこりがきれいに取れます。
ガムテープやコロコロも楽ですが、生地を傷める可能性があるので、僕たちはもっぱらこの南部箒。
そして何より自分たちが着ている洋服の手入れに使います。ガチガチに固まった毛玉は無理ですが、
毛玉の出来かけ位だったら何と!毛玉が無くなっちゃうのです。
どうしてか?って話は先日もお話ししましたが、ほうきモロコシの縮れと言う九戸の気象条件が生んだ
産物を職人が技を極めた時に凄い箒が生まれるのです。

そんなすごい箒は洋服用の一番安価なタイプで1万5千円、床を掃く箒は2万円からとかなり高額です。
僕はこの箒の良さは5年間自分で使って良いモノだと自信をもって思えますが、
「じゃあこの店で売れるの?」
「そんな体力がこの店にあるの?」と聞かれると「うっ、、」と声が出なくなっていて、イベントをや
りたいけど高倉さんは忙しそうだからいつか声をかけさせて頂こう。と言い訳をずっとしていました。
でも、今年の4月4日。僕は高倉さんに思い切って連絡をしてみました。僕たちの会社は4月が新年度です。
数日前に今年度のスローガンを発表しました。
「ひとつ上のレベルにチャレンジ」これが2016年度のスローガンです。
今までの上に向かって飛べてない自分にはっぱをかける意味でこの言葉に決めました。
断られることを覚悟して連絡した高倉さんからは数か月後に「一度お店を見に行くよ!」と電話を頂き、
その後自由が丘店に来てくれてイベントの開催が決定しました。
さらに「実演販売したいからスペースを用意してくれる?」はじめての実演販売です。

開催が決まって大喜びしたのもつかの間、どんどん不安になっていきます。
「売れなかったらどうしよう、、、」
妻は開催が決まったその場で「今年の夏休みは高倉工芸さんに見学に行きましょう!」と高倉さんと予定
を決めてしまいました。畑を見学して、箒作りの現場を体感し高倉さんの言葉を一言も聞き逃さないよう
にした貴重な経験でした。何より「僕たちはこの箒を作っている現場の空気を感じて来たんだ」という事
が自信につながりました。

あっと言う間にイベント前夜。直前まで高倉さんが海外に行かれていたので、どの箒が何本、価格帯は?
と言う基本的な情報がありませんでした。箱を開けると洋服箒の人気の価格帯の2万円のタイプを中心にゴロゴロ。
もう一つの箱には中くらいの長さの箒がゴロゴロ、このタイプは3万円が一番人気なのだそうです。
そして10万円の箒が!!一気に汗が出てきました。最後は180cm以上ある頑丈な木箱に長箒が入っています。
3万5千円、5万円、7万円、、何だか価格の感覚が麻痺してきました。
そして一番奥に入っていたのは、40万円と50万円!!これ箒の価格ですよ。
この価格の箒が納品されるとは聞いていなかっただけに、僕たちはビビりながらも、50万円の箒の神々しいまでの
美しさに心を奪われたのでした。

そしていよいよ当日の朝です。
続く

日本のカッコイイを集めたお土産屋さん
katakana/カタカナ
河野純一