カタカナのつくり手とはこび手「sonorとやさしい革」~山口産業 工場見学編 前編~
sonorさんに欠かせない”やさしい革”。
他のレザーブランドブランドとは異なる、革本来の風合いを活かしたものづくりが、とても気になりました。
この革はどのように作られているのか、その革を使いどのように作られているのか。
「もっと革のことが知りたい」そんな思いで、
sonorさんとその革を作っている山口産業さんを訪れました。
今回のブログでは、東京墨田区にある山口産業さんの見学の模様【前編】をご紹介します。
スカイツリーが見える「八広駅」にカタカナメンバーが集合しました。
少し早めに着いたので、住宅街を抜け、あたりを散策していると、見えてきたのが、荒川。
そして、山口産業さんに向かう途中にいくつかの工場を通り過ぎました。
でもなんだか静か…
後々、山口さんにお話を聞くと、元々は同業者が100件ほどあった工場周辺。
現在都内では、食用の豚の皮からなめす工場は、5件、6件とかなり少なくなってしまったそうです。
そして、山口産業に到着です。
入口から工場の様子が少し見え、胸が高鳴ります。
工場見学の前に、山口産業三代目の山口さんに
山口産業さんのこと、やさしい革のことをお伺いしました。
まず、一番気になっていた「やさしい革」が生まれた訳は、今から40年ほど前に話がさかのぼるそうです。
当時は、世界的に見ても金属や化学性薬品を原料としたクロムなめしが主流だったそうですが、どのような経緯で、革が誕生したのでしょうか。
そのきっかけは、海外のある場所からでした。
「1990年位に、私の父がフランスの展示会を訪れた際に、紅茶の香りがする一角のブースを見つけたそうです。なんだろうと思い、話を聞くと、そこで植物タンニンなめしをしているタンナーたちと出会いました。」
世界では「環境を考えたなめし」を研究した結果、
古来より行なわれていた「植物タンニン鞣し」がヨーロッパの革業界で最先端の加工になりつつあったそうです。
「世界の最先端についていく」独自の植物タンニンなめしを開発する為の独自の研究が始まりました。
ですが、植物タンニンなめしの開発は、技術、膨大な時間、素材が必要になり、想像以上に大変なものだったそうです。
植物タンニンなめしは、自然素材でなめしている為、同じような条件でテストしても、なかなか上手くいきません。
そして地道に、幾度もの研究を重ね、ようやくたどり着いたのが、「ラセッテー製法」。
水と植物で“やさしい革”をつくる、山口さん理想の技術です。
ラセッテー製法が完成していても「植物タンニンなめし」はやっぱり、難しい。と山口さん。
「やっぱり木の樹皮なので1年通じて安定的な成分ではないのです。
鞣すたびに色が違ったり、具合が違ったり、当然日本の場合には四季もあるので水温も異なるなど、様々な問題がありました。
そして日々革と向き合う30年の経験で安定的に展開できるようになったのです。
自然のものと向き合う大変さ、難しさをひしひしと感じます。
また、開発を後押ししたのには、もうひとつのエピソードがありました。
大学を卒業され、一度異なる業種に就職されてから現場に戻った山口さん。
毎日技術を受け継ぐための作業をしていると体に湿疹ができる異変が。
「何かなって思ったらクロムアレルギーでした。植物タンニンなめしの開発は、息子に継がせるためにみたいのもあったのかもしれない。」
お父様のことをすこし照れくさそうに、お話される山口さん。
素敵なエピソードに、胸があつくなりました。
そして、なめし方だけではなく、さらに山口さんが注目したのがなんと皮の仕入れ先である「豚の飼育環境」。
日本では、妊娠豚を檻に拘束する飼育方法が主流ですが、
やさしい革は、四国の牧場で、ストールフリーののびのびと育った食用の豚の革を使用しています。
いただく命が育つ環境のことも考え、皮が革となり形になったとき、どう生かすか。
目をつぶって触っても分かるように、皮が革になっても動物本来が持っている繊維の構造を生かしてあげたいという山口さんの想いに、園田さんのものづくりとの重なりも感じました。
最後に山口さんに、これからの「挑戦」をお伺いしました。
「“やさしい革”の活動を次の世代に受け継げるような体制作りをしたい。」
その体制づくりとは、なんと国内の同業他社や海外への技術提供です。
私はとっても驚きました…
あれほど大変な思いをされて生み出した製法を提供!?ましては、海外に…
ビジネスの観点だけで見れば、特許を取って、独自の技術として売り込むべきなのかもしれません。
だけれど、山口産業さんは違います。
この話を聞いたとき、
「自分の仕事の先には人がいるからその人たちのことを考えて働きなさい」と社会人になってから幾度となく言われてきた言葉がふと頭に浮かびました。
人のため、環境のためにものづくりしている「山口産業」さんは、まさにこの言葉の鏡です。
次世代に、革づくりに関わる全ての人に「やさしい革」が幸せをもたらしてくれる。
そんな気がしてなりません。
日本のいいものを次世代に繋げていくために、私たちができること。
たくさんの人に知ってほしい。良さを知って、使ってほしい。
「丁寧に、伝えていこう。」
改めて、気が引き締まる思いになりました。
【sonor やさしい革のバッグ展】
日時 11月28日(土)-12月11日(金)
場所 katakana/カタカナ自由が丘店
◎イベント詳細は、上画像をクリック!
【カタカナのつくり手とはこび手「sonorとやさしい革」ブログ一覧】
◎山口産業工場見学編 前編
◎山口産業工場見学編 後編
◎sonorアトリエ訪問編 前編 やさしい革からバッグができるまで
◎sonorアトリエ訪問編 後編 sonorの丁寧なものづくり