Katakana-日本のかっこいいを集めたお土産屋さん

さがしモノの旅 番外編 宝島染工さんに行ってきた

#さがしモノの旅

「洋服で人生が変わる」いまも本気で思っています。

ワクワクする洋服に出会いました。
福岡の宝島染工さんの作るモノには、こころを揺さぶる何かがあります。
むかしから「馬子にも衣裳」といいますが、意味はごぞんじのとおり
誰でも素敵な衣装を着れば、立派に見える”

なんだか着るもので内面をごまかすようですが、ところがどっこい。
着た本人は背筋がピンとして、まんざらでもないイイ気分になるモノです。
それをきっかけに、馬子が馬上の人になるかもしれません。

宝島染工の事を知ったのはずいぶん前。

5、6年前、iroseというレザーブランドの展示会場のテーブルに、藍染のサイフが並んでいました。その時にはじめて藍染が布モノ以外にも染まるのだと知りました。
九州の宝島染工という染屋さんにお願いしたと聞いたのが名前をしるきっかけ。
そんな藍染のサイフですが、最初はとりあつかうことに慎重でした。
なぜかというと、、
染まりぐあいに個体差がかなりあって、なおかつ色落ちがするから。
ある日、iroseのデザイナーの高橋源さんが、この藍染のサイフを使っているのをみてノックアウト!めちゃくちゃカッコよかったのです。
薄いブルーの革が、つかいこむとドンドン濃くなり艶がでて、染めムラの濃淡がなんとも言えない景色になっていく、うまく言えないけど「宇宙や深海みたい」小学生か!
それ以来「宝島染工」という染屋さんを意識しはじめたのかもしれません。

 

宝島染工の大籠さんとの出会いは突然だった。

新木場のCASICAでやっていた展示販売会に行ったときのこと。
カッコイイ服を展示しているブースがあって、「これ、どこのブランド?」と妻に聞くと、小声で「宝島染工さん」
妻は最初からしっていて、どうりで目の色を変えてラックの中を見ていたのだと後からわかった。

その会場で、接客してくれたのが社長の大籠(おおごもり)さん。
独特のたたずまいに、最初は「おっ!」と身構えましたが、話はじめるとおだやかな声のトーンに引き込まれ、気がついたら墨染のロングシャツを買ってしまった。

「いつかカタカナでイベントをやりたいね」
「でも開催してもらうにはハードルが何個もありそうだね」
そう妻と話しながら帰宅したのは昨年の10月の事。

 

コロナ禍になり東京の店の人間が、出張で全国を飛びまわることがむずかしい世の中になってしまったけれど、不思議なことに福岡だけは道がひらけているようで。
3月に緊急事態宣言が解除された後に飛び立ち、八女の久留米絣の織元の坂田織物さんと、半纏(ハンテン)でおせわになっている宮田織物さんをかけ足で打ちあわせ。
大満足の出張の成果にホクホク。その時の様子は「さがしモノの旅 福岡八女編」でお伝えしますね。

八女から宿のある福岡に戻り、CAFÉにおいてあったチラシを見ると、展示会のお知らせが。
Thought(ソート)という九州の作り手があつまる合同展示会なのだとか。
ひさしぶりの展示会を見るために、ふたたび福岡に来ることを決めました。
今回は行けなかった宝島染工さんを訪れる理由ができた。フフフッ。

 

2021年4月。福岡空港からレンタカーで宝島染工さんのある三潴郡大木町へ。
福岡県の南西部、久留米市の南の方で、久留米絣の産地の八女から車で30分くらい。

迎えてくれたのは営業の吉田さん。
めずらしく緊張している僕を笑顔で迎えてくれました。
なぜ緊張していたかと言うと、3月の出張から帰ったあと店長である妻とバイヤーの平岡さんとの定例のミーテングで「夏に染め物のイベントをやりたい」とアイデアがでたのです。アイデアと言うか、ほぼほぼ内容は彼女たちの中では決まっていて、
「宝島染工さんを紹介したい!」
思いはそれ1つ。

なので、今回の僕の使命はこの商談を何としてでもまとめ上げて、イベントを開催させていただく了解をもらうことなのです。
でも、緊張は最初だけでした。
「どんなブランドをお店に置いているのですか?」社長の大籠さん。
洋服はNO CONTOROL AIRと伝えると、茶目っ気のある笑顔で、
「あのブランドは良い服をつくるすごい人たちですね!」
「洋服選びに迷っている人がいたら、あのブランドを毎シーズン1枚ずつ買えばいい」
ぼくがいつも心の中で思っていたことを、パーンっと言い切られるすがすがしさ。

 

もともと洋服屋で会社員をしていた僕たち夫婦は、洋服が大好きなのです。
アパレル(洋服)はチャラチャラしてるイメージをもたれることが多いですが、洋服の力は本当にすごくって、その人の良さを洋服が引き出すことで、内面まで磨かれるのだと信じています。ブランドだからとか、高級だとかは関係なく、その人のスタイルにあっているかが大切なのです。

なぜ宝島染工をはじめたのか?

もともとグラフィックを勉強していたという大籠さん。
大学では染色を専攻したそうです。その後タイプの違う染めもの会社で経験をかさねて、
天然染めの工房を立ち上げたそうです。それが2001年の事なので今年で20周年!!
天然染めというと、藍染・草木染・泥染めなどなど、素敵だけど手染めで化学薬品を使っていないとなると、正直手を出すのがとまどうプライスになってしまいます。
「天然染料の服を着たい人はもっとたくさんいるはず」
「どのようにしたらふつうの人が着れるモノにできるか?」
宝島染工さんの事をネットなどで調べると、“中量生産“というキーワードが出てきます。
大量生産ではなく、作家の1点ものでもない。手作業ができて、同じものを200枚作れる技術と仕組み作り。
大籠さんはだれもチャレンジしていなかったからこそ自分でやってみる。
その結果、けっして安くはないけれど、がんばれば手の届く価格を実現しています。

 

染め屋さんがなぜ洋服を作っているのか。

宝島染工の大籠さんの話を聞けば聞くほど、染め物にたいする愛があふれだします。
そこでふと疑問がわいてきました。
洋服はだれがデザインしているのだろう?

宝島染工の会社自体は染色工場なので、いまも多くの外注をうけて、他のアパレルの仕事を生産しています。
アパレルから受注をもらうためには、「こういう染め方ができますよ」という見本が必要です。以前は生地の段階でアパレルの企画も判断していましたが、最近は洋服のカタチで染めの見本を作らないと受注が決まらなくなってきたのだとか。
既製品を買ってきて染め見本を作った時代もありますが、どうせだったら自分が納得する洋服でプレゼンしたい。
そんなきっかけで宝島染工のオリジナルラインが生まれました。
ユニセックスでエイジレス。この洋服には境目がありません。

 

 

どうしても工房を見たかった

打ち合わせも無事におわり、イベントを開催させていただく事になりました。あっという間に2ヶ月がたち、イベントでどの洋服を並べるかきめる時期になりました。
そんな時、偶然にも福岡に出張する用事が2件できたのです。

 

すぐに連絡をとり念願の工場見学ができました。
天然染料を中量生産する工場はどんな設備でどんな方たちが働いているのだろう?
国道から少し入った、田んぼと住宅が点在する地方でよく見るのどかな風景。わき道を進むと見えてきました。
町工場のような想像をしていましたが、早くも違う雰囲気。。

 

手前で作業していたのは草木染。
何度も染めの加工をくりかえして色を安定させていくのだそうです。

 

奥の部屋では藍染の作業をしていました。

宝島染工では国産の本藍ではなく、インド藍を使っています。

インド藍を使用する理由
国産の藍(本藍)では、キアイと同じく、藍色の色素の元となる「インジカン」が含まれるタデアイ(タデ科)という植物の葉を発酵させて染料液を作り、染めていきます。
主な産地は徳島県ですが、タデアイの産地、生産量が減少し続けている現代において中量生産、そして日常手の届く範囲の商品価格に対応するために、宝島染工では安定した収穫があり、純度が高いインド藍を使用しています。

 

たらいの目の前には時計があって、職人さんは1枚ごとに時間を計りながら染めていました。職人の感性も大事ですが、レシピを作ることで同じものを何枚も生産する。これがとても大切な事なのです。

 

染めたてはグリーンっぽいピーコックブルーですが、空気に触れると藍色になっていきます。目の前でドンドン色が変化していくので「わ~!」とおもわず声が出てしまう。

 

工場にはあと染め物用の乾燥機が2つあるくらい。
思っていたよりもコンパクトな生産現場でした。
このスケールで中量生産をしつづけるには、作業効率がをきちんと考えないとむずかしい。
そして驚いたのが、職人さんたちの年代の若さ!
20代から30代の方たちが黙々と作業をしています。
全国のいろいろな産地を訪ねるカタカナ店主の河野ですが、ここまで若い人が多い工場はめずらしい。
工場好きの僕はいつまでも見ていたくなるのでした。

 

作業着が美しい。
狙ってできるものではない染め物。
まるでアート作品の様です。

 

ワクワクが止まらない。

 

その後、倉庫兼ショールームに行くと大籠さんがお出迎え。
あいさつもそこそこに妻は商品セレクトに。
「最初のお取組みだから控えめに商品を選ぼうね」
といいながら来たつもりが、ピックアップする洋服がドンドン増えて。
やる気全開!!

 

結論です。
売り場を拡大する事に決まました。
どうせやるなら。宝島染工さんの世界観も知っていただこう。
今すぐ着れるものはもちろん。秋に着たくなる素材のモノもたくさん並べます。
ここまでスタッフが事前に盛り上がっているのもめずらしい。
昨年入社した、学生時代に染色を学んだ野田さんは、「節約節約、、」とお昼はおにぎりを持参しはじめました。

なんだか、懐かしい。。
僕たちの若い頃はなんてセリフはガラにもないですが、
服を買うためにひたすらアルバイトをしていた事を思い出します。

 

洋服で人生が変わることもある。
ひょっとしたらそんな1枚があるかもしれません。

 

「さがしモノの旅 番外編 宝島染工さんに行ってきた」でした。

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